"THEORY OF EVERYTHING: VIDEO ART FROM TOKYO"
1st screening: Workstation Arts Center, Beijing (February 18th, 2006)
2nd screening at Tank.tv, online (www.tank.tv/)
3rd screening: Location One, NY (June 21st, 2006)
4th screening: Einstain Auditorium, New York University, NY (July 31st, 2006)
5th screening: Asian Cultural Council Office, NY (August 15th, 2006)
6th screening: Tainan National University of the Arts, Tainan (March 7th, 2007)
7th screening: DongFang - The Cinema of the Far East, Napoli (Octber 25-28th, 2007)
8th screening: Process Room, Irish Museum of Modern Art, Dublin (December 10th-15th, 2007) |
the artists:
荒木悠
泉 太郎
小林耕平
森田浩彰
永塚大輔
能瀬大助
奥村 雄樹 佐々木 健 田中 功起 山下 麻衣 + 小林 直人 横谷 奈歩
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万物理論(Theory of Everything / TOE)とは、自然界における究極の理論である。端的に言うと、重力理論である一般相対性理論と粒子理論である量子力学とを止揚し、統一するものだ(それゆえ「量子重力論」とも呼ばれる)。世界中の理論物理学者がその姿を追い求め、超弦理論、ループ量子重力論などといった仮説を提唱しているが、いまだにその正体は見えてきていない。
物理学者たちと同様、ここで紹介する日本人映像アーティストたちもまた、「この世界とは一体何なのか」という根源的な問いを掲げて作品を制作する。物理学者たちが、肉眼では見えない極小の世界や、数学という純理論的な領域、宇宙の始まり・終わり・果てなどといった時間的にも空間的にも長大なスパンなど、非日常的なパースペクティヴで研究を展開する一方で、彼らはあくまでも日常レベルにおいて「小さな事件」を仕掛け、この世界の法則(の異様さ・不思議さ・ありえなさ...)をあぶり出す。
この行為を実践するにあたり、映像ほど適したメディアはないだろう。単一のフレームとリニアな時間で制限された「閉じた小宇宙」とでも呼ぶべき映像においては、誰もが時間と空間を「編集」という名のもとに操作し、現実の世界ではありえない現象を顕現させることができるのだから。そこでは、五個の骰子を投げれば毎回ゾロ目が出るし(山下麻衣+小林直人「miracle」)、同じスニーカーが次々と階段上から落ちて来るし(田中功起「Sneakers」)、風船はテレポーテーションを繰り返すし(奥村雄樹「Transfer」)、何の変哲もないホテルの部屋が電車の車内へと変貌するし(横谷奈歩「現実に生きる僕とそうでない僕と」)、DVカメラは小さなパイロットが乗り込んだ宇宙船として爆音を発するし(泉太郎「パナゾイド」)、バットはその頭を地面に擦らせながらどこまでも疾走するのだ(佐々木健「バット」)。
「万物理論」という客観的な解答を求めるのではなく、「万物理論」によって成立しているこの世界のあらゆる物理現象そのものを新たな視点で見つめ直すこと。彼らが実践しているのは、そうした主観的で人間的な「研究」にほかならない。
奥村雄樹
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